「普通なら、どんなふうにするものだ」
「そうですね…。公園や原っぱのような場所で、敷物を敷いてその上でお弁当を広げるのです。食後にはデザートなども用意して。あとはただ大切な人と語らいながら共に食べ、穏やかな時間を過ごすのです」
「穏やかな時間か…」
アルさまの声はどこかさびしく響く。
アルさまの孤独を感じ取ってしまった私は、こういったアルさまの一つ一つの表情に敏感になっているようだ。
その孤独を少しでも和らげてあげたい。
烏滸がましい願いではあるけれど。
私は貧乏で、いい暮らしはできてこなかったけれど、愛に溢れお金ではとても手にできない幸せな日々を送ってきた。
温かく心地のいいその日々は、今でもかけがえのない思い出だ。
「アルさま、スープもあります。ホッとしますよ」
「ああ」
少しでも穏やかな気持ちになってほしくて。
私の前では、取り繕わなくてもいいように。


