冷酷な王さまは愛し方を知らない



ー貧乏暮らしとおさらばできるのよ!


その言葉が頭から離れない。
貧乏。
それは、私にだってわかる。

お金は必要だ。
お金があればお母さんに満足いく治療が受けさせてあげられる。
だから、私もお父さんも必死に働いている。



ここに来て、王族の生活を仮としても経験して、その生活の差に胸が苦しくなることがある。



だから…。
ミリアさんの想いをすべて否定することはできない。


でも、だからって私もとは言えない。
思えない。


「リズさま!王さまと騎士団が戻られます!」



セシリアが息を切らしてやってくる。
その言葉に私はハッと顔を上げた。


「いきましょう!」

「はい!」



私は駆け出す。
王さまが戻られる。

ご無事だろうか。
王さまは確かに冷酷なのかもしれない。
あまりよく知らない。
まだ知り合って間もない。


それでも、一度知り合ってしまえば。