「…仕方ない。それで許してやる」
「はい…。ありがとうございます」
不思議な人だ。
もっと畏まれというならまだしも、砕けろだなんて。
思ってた人と、少し違う。
やっぱり、噂は当てにならないんだわ。
「剣を持ってきてくれ。気をつけろよ」
「はい」
着替えを一通り済ませ、最後は剣を腰に差すだけ。
私は言われるままに立てかけてあった剣を持った。
鞘に納められているとはいえ、それを持つのは少し怖ろしく思う。
ずっしりと腕に重いそれは、命の重みのようにも思えた。
「こんなに重いものを振るうのですか」
「軟な腕だな」
「そ、そんなことありません」
重たげにもってきた私を見て、アルさまはフッと笑う。
そんな風に笑うのだと、一瞬目を見張った。
「もう大丈夫だ。下がっていい。あまり外を出歩かず部屋でゆっくりしていろ」
「で、ですが…」
「お前にできることはもう何もない。黙って城で待て」
でも、確かにその通りで。
私はそれ以上なにも言えなかった。


