「これをここに通して止めてくれ」
「は、はい!」
王さまの着替えを手伝う。
初めての事で戸惑いながら言われるままに手伝った。
王さまは一つ一つ丁寧に教えてくれる。
それはとても意外だった。
「…呼び方、なぜ変わってないのだ」
「え…?」
「以前の呼び方でよいと言ったはずだが」
「え…、ですが…」
着がえの手は止めずに王さまが話し始めた。
以前の呼び方って、それは、私が王さまを王さまだと知らずに呼んでいた名前だ。
知ってしまった今、あんな風に馴れ馴れしく呼ぶ事なんてできない。
「俺がいいと言ってる」
「ですが…、じゃ、じゃあ、キースさんと一緒でアルさまと呼びます。それではいけませんか?」
精一杯の譲渡だ。
王さまの名前を略するなんてとても恐れ多いことだ。
他の方と同じように、アルヴィンさまと呼ぶべきだと思うのに。


