いまだにアルさまの事を、冷酷だと残虐な王だと罵る者もいるのだと風の噂に聞く。
こうしてアルさまと向き合えばそんなことないとすぐにわかるのに。
でも、その噂すらアルさまを陥れようとする者の差し金なのではないか…。
今まで知らなかった世界を知って、そう思うようになった。
「ドレスがよく似合っていたとキースが言っていた。見るのが楽しみだ」
「…いえ、私なんか…。お恥ずかしいです」
「お前は謙遜しすぎだな。お前のウエディングドレス姿など、美しいに決まっている」
甘い言葉。
見ればとても暖かな表情で胸がどきりとする。
私はその言葉でいとも簡単に心が安らいでいく。
いろんなごちゃごちゃした感情も、アルさまの手にかかれば一瞬だ。
「もうすぐ、名実ともに、お前は俺のものだ」
「…はい」
それが嬉しい。
私の身も、心も、すでにアルさまに差し出しているつもり。
それでも、それが正式に認められるのだ。
幸せに思わないはずがない。


