「それはそうと、彼は食事の時間になると行方をくらますのですよ」
「え?」
「正式にアルさまと契約を交わしたのですから、食事面の手配もしているのですが…」
「食事を取っていないということですか?」
契約を交わして一週間。
時折クリスさんと訓練をしているらしいのだけど…。
「さあ。他でとっているのかもしれませんが」
「他…」
「これまで一箇所に定住していなかったでしょうし、慣れていないのかもしれませんね」
「そっか…」
「もし、機会があれば声をかけておいていただけますか?」
「私がですか?」
「あなたの言うことなら聞くようですから」
キースさんがにこりと笑ってそう言った。
確かに、何故だかコハクくんは私に懐いてくれているようだ。
無感情だった彼が、少しだけ感情を見せる。
「わかりました。話してみます。あの、でしたらお願いがあるんですけど」
「はい。なんなりと」


