冷酷な王さまは愛し方を知らない



最後にアルさまのお顔を見たかった。
でも、声が聴けただけでも十分。

鼻にツンと痛む。
こみ上げてきそうな涙を抑え、声が震える前にと口を開いた。


「アルさま…。愛しています。これからも、…ずっと」



そんな資格はなくとも。
私はそっと下の隙間に手紙を差し込みその場を去った。
出るまでは、泣かない。

だって私は幸せだった。
アルさまと幸せな時を過ごすことができたのだもの。

私は間違った道を選んだ。
それでも、アルさまの危険を知らせることはできた。

きっと、キースさんが、クリスさんたちがアルさまを守ってくれる。
コハクくんも、きっとどうにか逃げ切る算段は付いているんだろう。

だから自分の事は気にするなと言って来たんだろうから。



私は布で顔を隠し、城門のところに行く。
メイドだと偽り、城下に用があると通してもらった。



そして、城門からずいぶん離れたところで一度振り返り城を仰ぐ。




「さようなら、アルさま」



一筋、我慢していた涙が零れた。