冷酷な王さまは愛し方を知らない



なにがあったんだろう。
私は部屋を飛び出し、階段を降りる。


「リズさま?」



途中でキースにすれ違ったけど、返事を返す余裕がなかった。
なにかがあったに違いない。
クゥちゃんの様子はただ事じゃなかった。

なにかを私に知らせようとしてた。



クゥちゃんが連れ出そうとした私の部屋側には、植木が並んでいる。
その向こう側には城壁があって外と区切られている。



「キィ!キィ!」



クゥちゃんの声が聞こえ、その声の方へと急ぎ足で向かう。
木の生い茂った向こう側に人の姿がちらりと見えた。



「…コハクくん!?」




それはコハクくんで、ぐったりと横たわり、荒い呼吸を繰り返しているのか肩が上下に揺れている。
見ると体中傷だらけで、黒い服でわかりづらいけれど血でぐっしょりと濡れていた。



「どうしたの!?酷い怪我!」

「…おま…な、で…」

「クゥちゃんが呼びに来たの。どうしたの、この怪我…」