「それより、さっき、なにか考え込んでいたように見えたけど…」
照れくさいのか、クリスさんはさっさと話題を変えてしまう。
それが少しおかしくて笑ってしまいながら、その問いの返事をしようと口を開く。
「名前を考えていたんです」
「名前?」
「子ザルの名前なんですけど…。名づけを頼まれてしまって」
前回、コハクくんに返した返事に、あの子ザルの名前を問うとその返事は名前はないからつけたらいいというものだった。
名前を付けていないなんて、思ってもみなかった。
必要性を感じなかったんだろうか。
「子ザルの名前か…。呼びやすい名がいいんじゃないか?子ザル自身も覚えやすいような簡単な名前とか」
「子ザルが覚えやすい…」
それはそうかもしれない。
凝った名前もかわいいけれど、子ザルが覚えられなかったら意味がない。
自分の名前だって理解できないとダメなんだわ。
「ありがとうございます。ちょっと考えてみます」
「ああ。じゃあ、俺は訓練に行くよ」
「はい。頑張ってください。無理のない程度に」
「はは。わかってるよ」
クリスさんは手を振っていってしまった。