冷酷な王さまは愛し方を知らない



「え、どうしてアルさんがここに…」

「…人違いだ」

「え?でも…」

「キース、行くぞ」



その人は、きっと絶対にアルさんで間違いないと思うのにそう言って去っていこうとする。



「あ、あの!弁償を…!その服汚してしまったので…」

「いい」

「ですが」

「お前には到底弁償できるわけがない」

「…っ」




ピシャリと言い放たれる。
それは、きっと当然の事で。

この場にいるという事は、アルさんはある程度位の在るお方だったという事。
従者である可能性だってあるけれど、王城に仕える人の着るものだってどれも高価なものに決まっている。


アルさんは、私があの花屋で働いている庶民だって知っているから。
私には到底支払える金額ではないと言いたいんだろう。


それは、わかってるけど。
でも、私の不注意で…。