あんなに立派な浴場なのに、もったいない。
「今度、一緒に入るか?」
「……えっ!?」
優しい手が私の頭を撫で、聞き入ってしまう優しい声で言われたものだから、理解するのに時間がかかった。
思わず跳ね上がった肩に、アルさまは驚いたように目を見開いた後、可笑しそうに喉を鳴らして笑う。
その暖かな笑顔に、一瞬で目を奪われてしまった。
「まずは、共に過ごすことから始めないとダメだな」
「…は、はい。そこからでお願いいたします」
一緒にお風呂だなんて、恥ずかしくてのぼせてしまう。
アルさまは、きっと平然と入られてしまうのだろうけど。
「湯冷めしてしまうな。部屋まで送ろう」
「…はい」
もう少し…、名残惜しく思ってしまった気持ちを、忙しいアルさまを想うとグッと抑える。
少しこうして言葉を交わせただけでも、十分に幸せな事なのだから。