冷酷な王さまは愛し方を知らない



同じ城の中にいるはずなのに、これほどまでに会えないものなのか。
ゆったりとした時間があると、ついそんなことを考えてしまう。

普段は部屋に備え付けられている浴室でお風呂は済ませるのだけど、大浴場があると教えられ気分転換にと連れて行ってもらった。
部屋に自分専用の浴室があるなんてのも、規模が違いすぎて落ち着かなかったけど、大浴場はさらに規模の違いに圧倒されてしまった。


ここは国を治める方の住む城なのだ、それが当然なのだと思う。
そんな場所に私は嫁いできたのだ。



「リズ」



出会うものすべてに圧倒される思いで部屋までの道を歩いていると、不意に声をかけられた。
すぐにその声が誰のものか気づく。


「アルさま…!」

「大浴場に行っていたのか?」


湯上りの私に気づいたのか、アルさまがそう尋ねる。
アルさまに会えたことは嬉しいけれど、湯上りという一番気の抜けた状態を見られるのは恥ずかしくて戸惑う。



「気持ちよかったか?」

「はい…。でも、豪華さに圧倒されてしまって」

「そうか。俺も、あまり行かないな。部屋で済ませてしまうことが多い」

「そうなんですか…」