冷酷な王さまは愛し方を知らない



「す、すみませんっ…そのっ…!」

「いい、触るな」



パシッと手を払われる。
赤いシミは消えず残ったまま。




「いかがなさいました?」



そんな私たちに声をかけて来た男の人。
黒髪短髪のセンター分けのキリッとした顔つきの男の人。
スーツのようなきっちりしたものを着ていて胸には紋章がついている。

王族関係の方かしら。



「なんでもない」

「あ、あの。私がこの方の服にワインをかけてしまって…!申し訳ありません」

「……」



私が慌てて頭を下げそう告げる。
すると、その人はジトっとした瞳をワインをかけてしまった人に向けていた。



「あなたはここでなにをサボってるんですか」

「うるさい」



少しバツの悪そうな声に振り向いた。
そこでようやく男の人の顔を見た。



「…あ、アルさん?」



見覚えのある綺麗な金髪。
金色の瞳。

クリスさんが花屋に連れてきてくれたアルさんに違いなかった。