「痛くない?」
「え…」
「痛くないように縛ったつもり」
確かに、縛られているけどそれの痛みは感じない。
でも、普通そんなこと気にする?
変な人……。
「なんで、そんなこと気にしてくれるの…?」
「なんで?」
「あなたは、私をさらった犯人なのに…」
私がそう尋ねても、その彼はなんの感情も表に出さず私をじっと見た。
「俺は、雇われただけ。お前に恨みはない」
なんの感情も見えない。
一体何者なんだろう。
「じゃあ、こんな事を頼んだのは誰なの…?」
恐ろしい状況ではあるのに、この人の淡々とした様子が少しだけ冷静にさせるのか。
私はできるだけ冷静にそう尋ねた。
「…興味ない。金さえもらえばそれでいい」
「お金…?」
お金のためにこんな事をしているということ?
「余計なこと言わなくていいのよ」
突然、別の声が聞こえる。
ハッとして体を固くさせる。
でも、その声に聞き覚えがあることに気づいてしまった。


