「助けるのが遅くなり、申し訳ありません」
「え…」
「女性の身体にこんな傷を…。それに、恐ろしかったでしょう」
キースさんが、悲しげな表情を浮かべそう言った。
どうしてキースさんが謝るのだろう。
悪いのはキースさんじゃないのに。
確かに怖かったし、あの絶望は忘れられない。
でもそれは、私が運が悪かっただけ。
そう自分に言い聞かせるしかないことくらいわかっている。
「アルさま…、大丈夫でしょうか」
「はい?」
「ご無事で、戻って来られますよね…?」
お礼も言えなかった。
助けてもらったのに、ちゃんと目を見る事さえできなくて…。
戦は、人の命を奪うもの。
それは、アルさまだって同じことだったのに。
戦に送り出せば、それきりなことだって在り得ることだった。
それなのに私、ちゃんと無事をお祈りすることもしなかった…。


