冷酷な王さまは愛し方を知らない



「でも、俺は本当に応援していたんだ。きっとリズならアルさまの心を包んでくれる。きっといい方向へ導いてくれるって」

「そんな、買いかぶりすぎです…」

「そんなことない。少なくとも俺は、花屋でリズに会う度癒やされているよ」



クリスさんはそう言って笑うと私の頭をクシャッと撫でた。
私に兄妹はいないけれど、兄がいればこんな感じなのだろうか。



「アルさまはこのままその事実もなかったことにしてしまうおつもりだ。だから、せめてリズには知っておいてほしくて」

「…はい」

「ごめんね、こんな話。何かしてほしいとかじゃないんだ。ただ、いてもたってもいられなくて」

「いえ…」



この話を聞いたとして、きっと私にできることはなにもない。
王妃になる覚悟なんてないし、アルさまの事は知りたいと思ったけれど、それがどういう感情なのかまだ自分自身でもわからない。

それに、身分が違いすぎる。

クリスさんは応援してくれたとしても、本来ならば結ばれるはずのない距離にいて。
アルさまに相応しい人というのはきっと他にいるのだから。