自室には入ると、あの冷徹な瞳が嘘のような優しい瞳をしているラファエルと、その後ろにたち、こちらを一瞬不思議そうにみたハーバートがいた。

ブラウン「申し訳ありません。お話し中でしたか。出直します」

ブラウンは部屋を出ようとするとジェイコブが、

ジェイコブ「いや、すぐに終わる。そこで待ちなさい」

と言った。正直、正体がばれないか心配で、早く出たかったがエミリーは迷ったが下を向きとどまることにした。

ジェイコブ「それであなた様ははこの国とあなた様の国を一国にしてどうなさるのですか。」

どうやらまた一国にしないかという話らしい

この国は土地が豊かで、作物がとれやすく、魚や果物どんなものだって新鮮でおいしい。だから戦争時代田畑を荒らす国はいなかった。田畑ごと手にいれたかったからだろう。
戦争が終わりもうそんな土地のためだけに戦や争いは起きない、そう思っていたが、どの国も一国にしたい。または、貿易がしたいなど口々に迫りわれが先だと言わんばかりにまだ戦争をしている国も少なくはないのだ。

ラファエル「我の土地はあまり豊かではないが、鉱石など、剣や家、服などに使うようなものは沢山とれるし、そういう商業は他《た》の国に、比べても豊かだ。だからこの国の土地の豊かさと合わせれば回りの国は到底及ばない国となるだろう。そうなれば、民《たみ》も皆喜ぶのではないか?」


ジェイコブ「そんな台詞は聞きあきておる、そういってくる国はいたが、調査に向かわせるとどの国も荒れ果て、鉱石どころかなにもとれん国がおおい。そんな国と一国になってなんになるのか。」

ラファエル「だったら我国にも調査兵をよこすといい。嘘ではないことがわかるはずだ」

ロベルト「失礼ながらラファエル様。そのようなことは隣国であるがゆえに、もうすでにすんでおります。がしかし、とても豊かとは…」

声のした方を見るとロベルトが暗がりのある壁のとこにいた。暗めの服だから気づかなかったらしい。

ラファエル「それはいつだ。」

ロベルト「……?」
ロベルトは返答に困る

ラファエル「調査に来たのはいつかと聞いている」

ロベルト「それでしたら10年ほど前にしたという記録がありますが、、、」

ラファエル「その頃か。確かにあのときは荒れていた。だが、今では我が次期国王確定のみのゆえ、取り仕切り必死にみな働いてくれたお陰でここ数年もたたないうちに盛んになったのだ。」

ラファエルがそういい終わると、ジェイコブは迷うようなそぶりを見せたかと思えばブラウンを見て何かを決心したようなそぶりをみせ、ラファエルに向き直る

ジェイコブ「よかろう。じきに調査するものを送る。」

それを聞くとラファエルは、浅くお辞儀をし、なにも言わず部屋から出ようとする。
その後ろからそそくさと、執事のハーバートがついてくる。

ラファエルはブラウンをチラ見し、立ち止まったが、なにも言わず部屋をあとにした。