夏の終わりだが、少し熱く感じる外の気温にじんわりと汗ばみながら約束の場所まで辿り着く。相手はもう来ていたみたいで黒い車が泊まっていて、車にもたれるようにして黒髪インテリアイケメンが立っていた。




「田端さん。自分が映える角度でも研究してるんですか?」



「おや、それは褒め言葉でしょうか?」



「……いえ。ナルシストですね。と、遠回しに言ったんですが?」




「…………それはそれは。褒め言葉として受け取っておきましょう。ところで、その猫は?」



「……。私の猫です。」




なるほど。なんて勝手に納得している田端さんを無視して車に乗り込む。そのあとに続き運転席に乗り込む田端さん。





彼はこの前の声の人でもあるし、スーパー帰りにストーキングして来た人でもある。




「さて、覚悟はいいですね?旦那様も奥様も、妹さんもお怒りですよ?半年ですもんね。お嬢が家出してから」




よく言うよ。勝手に放り出したのはそっちだろ?なんて思いながらもモモを撫でていた。猫は乗り物酔いするんでしよ?





そして、暫くしてから純和風の一軒家が見えてきた。それはここら辺で1番大きいんじゃないかって言いたくなるほどでかい家。





「つきましたよ。」




と、言いながらもドアを開けてくれる。私はそっと足を下ろし車から出ると、空気が一瞬にしてピンッと張り詰めた。




そして、どこからともなく複数の足音が聞こえてきて、自然と身構えてしまう。





「帰ってきたか……」



足音はやがて私がたっている玄関の段差の少し手前で泊まり低く太い声が頭の上から聞こえてきた。伏せていた顔をおそるおそる上げると、私を睨んでいるお父さんがいて、その横にお父さんを挟むようにして母と妹がいる。





「どこにいたんだ。」



「…………」




「どこにいたんだと聞いている!!お前には口がないのか!」




なんて怒鳴る父にモモか少し威嚇する、それを止めるために頭を撫でる。





「あなた、その辺にして。今わそれどころではないでしょ?」




母が父を止めに入り、父は舌打ちをして私を見下ろす。そうかと思えばドカドカと足音を鳴らして玄関から遠ざかっていく父。




「ほら、貴女も早く入りなさい。玄関で立ち尽くしているものでもないわ。」





なんて言う母に段差に座り靴を脱ぐ。モモを抱え直し、廊下を静かに歩く。