【おいで、拾ってあげる。】




なんて言った男性に腕を捕まれ連れていかれ、男性の家に来て、お風呂にほりこまれ猫と一緒にシャワー中。




「お前、大人しい子だね。」



なんて、猫を撫でながら現実逃避をしながらも……やばい人かも。なんて考えてる。まぁ、やばい人でも今の私は関係ない。だって、雪の中立ちすくんでいても凍えてしまうだけだから。




そう思いながらもお風呂から出るとタオル二枚とTシャツが置かれていた。Tシャツはデカすぎてワンピースみたいになっていたがお構いなく、猫を拭いて洗面所から出る。



そしたら、猫が私の腕から飛び降りて何処かに向かって歩いていく。残された私は少し迷って追いかけていくと先程の男性がスマホ片手に書類を持ってソファーに座っていた。




「ニャー」



猫の鳴き声で男性は私達に気づきスマホと書類をテーブルに置いて立ち上がる。私達に近づいてきてフワリと猫を抱きかかえ、私を見てニッコリと笑いながらも頭をサラッと撫でる。




「あの……」



戸惑いながらも声を出すとハットした顔をして




「あ、ごめんね……俺、田端誠(タバタマコト)ホットミルクでいい?」



「え、あ、はい。」



私の返事を聞いて猫を抱えたまま私の腕を引いてソファーまで来ると私に座って待っているように言って猫を置いてからキッチンへと姿を消す……



戸惑いながら猫を撫でて待っていると、マグカップとお皿をもって戻ってくる田端さん。



「熱いから気おつけてね?」



と、私と猫の前にホットミルクを置く彼。
猫はソロっとホットミルクを飲んでいた。私はと言うと……戸惑ってた……



「ふふ、君はこの猫ちゃんより警戒心が強いみたいだね。大丈夫、何も入ってないから飲みな?」


「……あの、」


「ん?」



声をかけるとニッコリ笑って私を見る彼。そんな彼にオドオドしながらも




「私、本気で拾われたんですか?」




そう聞くとくすくす笑う彼。その顔にドキッとしながらも彼を見つめてると




「そのつもりだけど?あ、それとも……あの雪の中放置してた方が良かった?」




なんて笑うから首を横に振る。それを見た彼はまた笑う。



「君の名前は?言いたくなかったら……俺が考えてあげるけど?」




そう言って微笑む彼。
本気か冗談かわからない……そう思いながらも名前か……私の名前……生まれた時に付けられた名前……両親に……誰にも呼んでもらえることがなかった名前……



「私は……遥です」



1度でいいから呼んで欲しかった名前……遥と伝えると彼は微笑み遥と呼んでくれた。それだけで、今日の出来事を忘れるんじゃないかと幸せだな気持ちになった。



「残るは猫ちゃんの名前だね?何がいいかな?遥が決めていいよ?」



「え!でも、田端さんが拾われたんですから……田端さんが決めた方がいいと思います。」



「えー?俺、名前つけるセンスないんだよね……んー。って、遥……田端さんってやめてよ。誠かマコでいいよ?」



なんて笑う彼に抵抗があったがまことさんと呼ばせてもらうことにして猫の名前は後日決めることになった。