言わなきゃ…。


"好きです"って、たった一言。
わたしが伝えたいのは、たった一言。

付き合ってくださいなんて、言わない。

…正確には、
言う勇気がなかっただけだけど。


クラスでは地味なわたしと
人気者でムードメーカー的な存在の君。


ここはね、少女漫画じゃないの。

ドラマでもない。

神様もいないし、

明日目が覚めたら美少女になっていたりもしない、普通の世界だから。


望んじゃいけない。


調子乗ったら、他の子にもなんか言われちゃうだろうし、噂はすぐに隣のクラス、そのまた隣のクラスにまで広がっていくもの。


伝えるだけ。
それでこの恋は終わりにしよう。

そう思ってた。


「あの…さ…」


「ん?」


だけど


君が、何かを察して、
困った顔で笑った時に、


「………暑いし、教室戻ろうか」


用意していた言葉とは違うものが口をついて出てしまったの。


「…そうだな」


告白ではないと知って
ほっとしたように笑った時に。


あれだけ決心したはずだったのにね、
あっという間に崩れちゃったの。