金曜日。

近所の居酒屋で大野くんの歓迎会をする事になった。

主賓の大野くんをお誕生日席に座らせ、幹事の私はオーダーを通すため、末席に座る。

幹事でよかった。
堂々と1番遠くに座れる。

私の隣には坂野くん。

「遥さん、手伝いますから、何でも言って
くださいね。」

坂野くんは本当にいい子だ。

会が始まって1時間もすると、みんなビール瓶を持って各席を回る。
酔いが回ってご機嫌だ。

酔っ払いの相手をしたくない私は、お酌に動く事なく、隣の坂野くんとずっと喋っていた。

ところが、そこへビールを持った哲平が来て、

「坂野、席、変わって。」

と言った。

「げっ」

お酒のせいか、思わず、正直な心の声が私の口から漏れた。

私は坂野くんの腕を掴んで、

「動かなくていいよ。」

と言った。

「はい。俺、今日は遥さんとの親睦会だと
思ってますから。」

坂野くんがにっこり笑う。

「きゃー、坂野くん、いい子〜。
私たち、仲良くできそうだね。
坂野くん、大好き。」

そう言って、私は坂野くんの頭を撫でた。

哲平は、釈然としない顔で、私の向かい側に座った。

「坂野、遥に媚び売ってんじゃねぇよ。
遥は人妻だぞ!」

哲平は、明らかに不機嫌だ。

「やだなぁ、大野さん。
人妻を呼び捨てにする人に言われたく
ありませんよ。」

坂野くんも哲平に負けてない。
今まで知らなかったけど、坂野くんていい男だったんだね〜。
うんうん。
見た目もかわいい系のイケメン君だし、この子、きっとモテるんだろうなぁ。

私は、酔った頭でそんな事を考えながら、2人のやり取りを見ていた。