18時。
けいちゃんが私の席に来た。
「遥、今日、何時くらいに上がれそう?」
と聞いたけいちゃんが一瞬で固まった。
「大野!?
お前、なんでここにいるんだ?」
「あぁ、河谷主任。
俺、今日異動になったんですよ。
分からない事があったら聞きに行くかも
しれませんから、よろしくお願いしますね。」
と哲平がさらりと答える。
「遥! 帰るぞ!!
俺は荷物取ってくるから、お前も着替えて
おけ。」
呆然とする私の横でくすくす笑う哲平。
「そんなに焦らなくても、俺、今すぐ遥と
どうこうなりませんよ。
時間はたっぷりあるんですから。」
けいちゃんの顔色が変わった。
「遥、今すぐ、着替えて来い。
着替えたら、俺が呼ぶまで更衣室から
出るなよ。」
けいちゃんのいつもより低い声が、怒りを含んでいる事を表していた。
けいちゃんが哲平を睨みつけている。
「分かった。
今、保存してシャットダウンするから、
待ってて。
けいちゃん、晩ご飯、何がいいか
考えといてね。」
私は出来るだけ明るく言ったが、この凍った空気を溶かす事は出来なかった。



