「じゃあ、とりあえず、繰り返しにはなる
けど、挨拶してもらおうかな。」

課長がグループのメンバーを集めて言った。

「本日付けでシステム技術部からこちらに
異動になりました大野哲平(おおの
てっぺい)です。
分からない事も多くてご迷惑をかける事も
あると思いますが、1日も早くこちらに
慣れて、戦力になれるよう頑張りたいと
思いますので、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

みんなが口々に挨拶をするが、私だけは渋い顔。

「席は河谷主任の席が空いてるから、そこを
使って。
佐藤さん、じゃなかった、河谷さん、確か
同期だよね?
いろいろお世話してやって。」

あ、課長、地雷踏んでます…
私、爆死するかも…

「………はい。」

「では、解散。
あ、歓迎会の幹事も河谷さん、お願いね。」

「えぇ!?」

「だって、同期でしょ?
よろしくね。」

課長〜!!!

哲平が段ボールを抱えて、やってくる。

「よろしく。
か・わ・た・に・さん?」

にやにや笑う哲平に心底ムカつく。

「よろしく。」

それだけ言って、私は仕事に取り掛かる。
隣にいても、無視すればいい。

隣は空席。
隣は空席。

私は呪文のように唱える。

なのに!

「ねぇ、歓迎会、いつしてくれるの?」

話しかけるな!

私は心の声を抑えて、

「いつが都合がいいの?」

「いつでも。
遥と一緒なら。」

「は!?
仕事中にふざけないでくれる?」

「くくっ
お前だって、仕事中にふざけて、河谷さん、
落としたんじゃないの?」

「!!!
そんな事しないわよ!
一緒にしないでくれる?」

「まぁ、いいや。
俺は、寿司以外なら、どこでもいいから。」

「はいはい。」

もう絶対無視!

私は12時まで、無言で一心不乱に仕事に打ち込んだ。