「主任。」
私は、席に戻って、隣のけいちゃんに声を掛ける。
「あの〜、大変、申し上げにくいんですが…」
「なんだ?」
「今週の金曜日も少し早めに上がらせて
いただきたいんですが…」
「………
今度はなんだ?」
「同期に飲みに誘われまして…
7時頃、上がらせていただけると嬉しいの
ですが…」
「………
男か?」
「はぁ…
あ、でも、オスではないと思います。」
「は?
なんだ、それ?」
「ですから、私の愚痴に付き合ってやろうと
いう心優しき同期で、先日のような
『あわよくば』的なオスの発想とは無縁の
同期だと思います。」
「………分かった。
ただし、帰りは危ないから迎えに行く。」
「えぇ!?
いいですよ。
ちゃんと1人で帰れますから。」
「お父さんとも約束したから、お前に夜道を
一人で帰らせるわけにはいかない。」
「はぁ…
分かりました。」
「じゃあ、これ、金曜までになんとしても
終わらせるぞ。」
「はい!」
こうして、2人でがんばって、金曜には完璧にインストールツールまで仕上げたのだった。



