部屋に帰ると、主任は手を離した。

「あの、今日は、ありがとうございました。」

私がお礼を言うと、主任は困ったように、

「お前は、今、隙だらけなんだから、
あんまり人を信用しすぎるな。」

と言った。

「隙?
そんなつもりはありませんけど…。」

「………
無自覚なのが、厄介なんだな。

まぁ、いい。
俺の手が届く範囲にいれば、守ってやるから、
離れるなよ。」

「はぁ。ありがとうございます。」

守ってやる…って、なんだか彼女にでもなった気分。

どうしよう。
主任なのに、胸がきゅんきゅんする。

「さ、今日早く帰った分、明日は休日
出勤するぞ。」

「えぇー!?
それはないですよ〜。」

「どうせ、デートの約束もないくせに。」

「そうですけど…。
そうだ!
主任、明日、デートしましょうよ。
主任の行きたい所でいいですから。
ね!?」

「『けいちゃん』はどうした?」

「あ!
もう!!
また油断したぁ。」

「お前、俺と寝たくて、わざと間違えて
ないか?」

「!!!
そんな事してません!」

「くくくっ
俺に抱かれたくなったら、素直に言えよ?」

主任は、またいつもの笑い上戸の主任に戻っていた。