「ただいま、戻りました〜。」

田口係長と大野くんが取引先から戻ってきた。

「おかえりなさい。」

私たちが返事を返すと、

「遥の『おかえりなさい』って、いいなぁ。
もっかい言って。」

「は!?」

私が苛立ちを露わにした瞬間、

「おかえりなさい。」

坂野くんがにっこり笑って言う。

「は!? お前、バカにしてんの?」

坂野くんは、大野くんの怒りを見事な微笑みで受け流して、

「あれ? 俺の渾身の『おかえりなさい』、ダメでした?
女子受けはめっちゃいいんですけど。」

「ぷっ」

坂野くん、最高!

「うるせぇ。
なぁ、遥、腹減らねぇ?
一緒にメシでもどう?」

「あぁ、いいですね。
遥さんはこの後、河谷主任とデートなので、僕が代わりに大野さんとデートしてあげますよ? 何、食べます?」

「食べねぇよ!」

大野くんは、イラッとしたまま、席に座った。

田口係長も肩を揺らして笑っている。

「遥さん、7時に帰るんでしょ?
もうひと頑張りしましょうね。」

坂野くんの優しさが身に染みる。
坂野くん、私の事守ってくれてるんだ。

「うん。
坂野くんも7時で帰るよ!
私、後輩残して先に帰るの嫌いだから。」

そう言って、私たちは後少し、仕事をがんばった。