まったく、人が落ち込んでるっつーのに、なんてデリカシーのない弟なんだ。 ……いや、しかし待て。 仮にもし逆の立場だったら、俺は巧巳《たくみ》のメンタルな事情をすぐさま察して気づかってやれるのか? ……きっと無理だろうなァ……。 春巳《はるみ》ならともかく、弟のそんな些細な変化に俺のようなニブチンが気付いてやれるはずがない。 そこでまた自己嫌悪。 ああ畜生、俺って奴は、なんて自分本位な野郎なんだ……。 両手で顔をふさいで溜息をつく。 ――あ、そーいや俺、手ェ洗ってねーじゃん。