あの瞬間、凍りついたと思った空気を、パリンと、軽快に笑って壊した彼女のあの表情が……、頭っから離れなくなってしまったのだから。
なんだよ。いやほんと、なんでなんだよ。
今日の昼……、いや放課後まで、アイツのことなんざどうとも思っちゃなかった。
ただの、志田と近江を切り裂くためのでっち上げ。
そのための、いわば生け贄だ。
それが今はどうなってる?
仮に今、近江と志田がイチャイチャイヤイヤしてたとして、それを思い描いてみたとこで、ちっともなんとも思わなくなっているのは、これは一体なぜなんだ?
ぐう……。
そうなのだ。
笑わば笑え!
俺って奴ぁ、たったアレだけで、メアドの交換なんてしょうもないことをしただけで、あっさりクラッと完全に!
浅瀬晴美に惚れてしまったのだ!
近江はどうした近江は!
知るか!
だから俺が一番困惑してるんだよ!
ああ、浅瀬晴美。
晴美ちゃん。
晴美ちゃん。
ハルミ。
ハル……。



