「――あ、ごめん。そんな顔しないでよ。深い意味はないの。コイツ、昔からすぐ騙される奴だったから、もしかしてキミもなんか下心があるんじゃないかと思っただけ。私、ちょっとやな言い方しちゃった。ごめんね」
「いや、そんなことないけど」
あるけど。
「なんかさ、ひどい言われ方ばっかりじゃねぇ、オレ」
俺の動揺なんぞ知らず、コリコリと頭をかくのは相変わらずのとぼけた志田である。
そんな彼氏にアハハと、長いまつげをふわっと寝かせて可愛らしい笑顔をこしらえ、
「やぁ、志田がってゆうか、私だよね。引き合わせるんなら、人の多いところじゃ、はなしなんてろくにできないもんね、ばかだなぁ」
なんて言う近江。
……かわええ……。
「んあ?いや、そんなことはないけどさ。まぁ、久しぶりだったから、ちょっとなに話していいか、わかんなかったってのはあるけど」
そんな極上笑顔を独り占めする頭かきかき男。
……呪わしい……。
ハッ。
違う、違うぞ。
今のは本校二年男子百五十余人の心の代弁である。



