ガタントトンと電車が走る。
窓の外には山堂川。
陽光あびてチカチカ光っている。
はぁ。今日も平和でなによりだな……。
なんて考えていたら、不幸にも途中駅で会いたくもない人々が乗ってきてしまった。
「あれ?嶋村くんじゃない」
「あ、ホントだ。テルだ」
志田と近江のクソバカップルである。
「よう。デート?」
きじも鳴かなきゃ打たれないのに、なんでこう、いらんことを俺は……。
「いや、えっと……デートっていうか」
もじもじする近江さん。
相変わらず、むやみに可愛らしい。
「買い物。ちょっとさすがに距離あるし歩くのもどうかなって」
上手くかわしたつもりか志田。
おまえら手ぶらじゃねえか。
「そっちは?」
「あぁ、俺の妹弟。こっちのちっこいのが弟の巧巳で、そっちが妹の春巳」
俺が紹介すると、ふたりは「どうも」とお辞儀する。
「……ハルミ?」
しげしげと俺の妹を見つめる志田。
おいおい。
彼女の御前でそりゃないぜ。
うちの妹なんてそちらのお嬢さんに比べたら田舎娘もいいところでして。
当の近江はなぜか含んだ笑みを俺に向けた。
「へぇ、浅瀬ちゃんとおんなじ名前なんだね。妹さん」
ああ!
いらんこと言いやがったな、そこの天パ!
「あーそうねぇ。偶然にもねぇ」
俺はさも興味なさそうに返す。
すると近江はくすくすと笑ったのでした。
あのアマ……。
兄妹揃って近江になんか吹き込んでんじゃねえのか?



