おかげさまで、俺の小学校生活はなかなかに虚しいものだった。
いじめにあっていたわけではない。
個人として俺を攻撃する奴なんていなかったし、いるわけもなかった。
皆、俺なんかに構うヒマなく、自分の位置の維持の方が神経を使ったからだろう。
ただ、なにもなかった。
空気を読めない人間は、いじめられないだけの空気になってしまうのだった。
あ、ただし、本物の空気と違って本当に在っても無くてもどちらでも同じという意味での、ね。
嶋村照巳《俺》の周りには特に何もなかったので、自然と蚊帳の外から中を見るのが日課になっていった。
人間観察が日課だったとか、他人に言ったら気持ち悪がられるのだろうけど。
しかしまぁそのおかげで、不思議で変なソイツの存在に気が付いたわけだけれど。



