「志田って、こうゆう趣味あんの?」 ぼそっと耳打つ香田。 そんなの俺に訊かないで。 俺はとりあえず話すこともままならない、この変人が落ち着くのを待って事情聴取することにした。 「おまえ、どっから泳いできたの?」 「寺」 「てら?」 「川の上の方にある寺」 俺は頭の中に地図を開き、川上をさかのぼってみる。 それで、思い当たるものにぶつかって吹き出しそうになった。 「も……もしかして、天教寺《てんきょうじ》のこと言ってんのか?」 「あ、それだ」 あ、それだ、じゃねえよ。