羊と虎


「そう言えば、鈴木のヤツ、経理の子に告白されたんだって」

「あぁ、光岡さん?」

「そうそう。ってやっぱり女子のネットワークは早いんだな」

「まぁ確かに、噂話は凄く早く回ってきますね」

「女子怖いな」

「そんな事言ってたら、山葉さん女の子怖いんだってって話が広まって、実は山葉さん女の子ダメなんだってって言われちゃいますよ」

「おい、その話はお前が流さなきゃ出てこない話だろ」

「あはははは、そう言われればそうですね」

山葉や鈴木と話す時は、軽口も言えて気が楽だった。

それでも、被る猫の大きさを変えるとボロが出やすいので、気を抜かないようにと気をつける。

『あぁでも、楽しいな。』

話に花が咲き、無理やり連れて来られた筈が、この状況を楽しんでいる自分がいた。


そんな風に考えていたら、カバンの中のスマホが鳴り出した。

「おい、スマホ鳴ってるぞ」