私の不安をあなたが一番知っている

協力してくれた生徒には約束通り望みの物を渡し、このことは誰にも言わないと約束させた。
協力する代わりに物をもらったといえば自分も批判されるため言うようなやつはいないが。


早速先生に宿題を減らすよう訴え、予想通り苦笑いしながら、お前が言うならそうしようと言わせることができた。
宿題が減って助かりましたという紙が意見箱に入れられるたび、笑みが浮かぶ。
時々仕事を手伝ってくれたあんらは、意見箱を見ながら一緒に喜んでくれた。


公約通り校則を変え、ゆっくり学校に来れるようになり、運動部はいちいち着替えずに済むようになった。


アンケートで見えた満足度も高い。
しかし、不満を持っている生徒もいた。


あの事件を知っている一部の生徒は、箝口令が敷かれているから口に出さないだけで、俺を忌々しげな目で見てくる。
篤彦とハクに投票した生徒は、口を揃えて生徒会長になるような人ではないと言った。


望みを取り入れているというのに、何が不満なんだ。
望みを読み取り続け、他の生徒からいい生徒会長だと言われるようになっても変わらなかった。


なぜだ。篤彦とハクにあって俺にないものとは……。
完璧になれない焦りと、俺を認めないことへの怒りで押しつぶされそうになる。
篤彦とハクはあんらの幼馴染だったから、その嫉妬も怒りを加速させた。もしもあんらが俺を捨ててどちらかを選んだら……。
あんらがそんなことをする訳がないと思いつつも、不安はつきまった。


いつの間にかハクは俺と目も合わさないようになった。休み時間も仕事をするから篤彦とも話さなくなった。湯浅先輩は校則を書き換えることに苦言を漏らす。校則ってころころ変えていいものなのかと。


かつての仲間に離れられたが、あんらだけは変わらずにいてくれる。
俺もあんらのことは誰よりも大事にしている。


六月の後半から俺の心に変化が生じていた。