「さようなら」


「さようなら。気をつけて帰るんだぞ」


心配そうに見送ってくれるけど、私みたいな高校生にそうそう事件は起こらない。気をつけなくたっていつも無事に帰れている。


なんか安芸津さんみたいな話し方の人って今まで見たことない。
今まで見てきた男子はギャハハと笑い、女子以上にヤバいを多用していた。ごく少数、話すのがゆっくりで普段は無口だったり、誰に対しても丁寧に話す人はいた。


辰也は学校ではどうなのか知らないけど、余り話さないし、言葉遣いが悪い。
でも友達が途切れたことがないから、学校ではもっと明るいのかもしれない。


お父さんはゆっくり話す人で、穏やかな口調だ。辰也にお父さんの性格が一欠片でも遺伝していれば……!遺伝とは残酷なものだ。


私はお父さん似なのか、お母さん似なのか、ふと考えた。
みんな私はお母さんに似ているという。目とか口とか輪郭とか。笑ったときの顔は写し取ったみたいと言われる。


私はそこまで似てないと思う。
お母さんと並んだ写真なんて差が激しくて見てられないし。
どちらかと言えばお父さんに似てると思う。けど、受け継いだのは悪いところだけだ。二人の悪いところを集めて私ができた。


顔はお父さんに似てても、性格は全然似てないよね。
だからなんか、話せないんだと思う。


でもいいんだ。きっとお父さんとは合わないだけだし、他に話せる人がいるから。


乙女とか……安芸津さんとか。
大きな手が頭にのせられたときの感触を思い出す。それだけで頬に熱が集まり、幸せな気持ちになる。
それなのにずっと考えているとなぜか恥ずかしくなって、時々考えを振り払いたくなってしまう。


今まで経験したことのない現象なのに、名称はピンと来た。