夜8時半

奏の隣で目覚めた俺は、暗闇の中、奏の寝顔を眺めていた。

やっと!
奏が俺の腕の中にいる。
今、この瞬間、世界一幸せなのは俺だろう。

俺は、しばらく奏を眺めていたが、先にシャワーを浴びて、遅くなった夕飯を作ってやる事にした。

ベッドをそっと抜け出し、シャワーを浴びる。

髪を拭きながら、奏の顔を見に戻ったら、奏も目が覚めたようだった。


「奏、起きた?」

「ゆうくん…。今、何時?」

「9時過ぎだよ。シャワー浴びる?」

「うん。」

奏は起きようとして、自分が一糸纏わぬ姿である事に気付き、慌てて布団の中に潜り直した。

「ははっ。今更隠さなくても…。」

奏は無言で俺を睨む。
そんな姿がかわいくて、俺はゆっくり近づいて、そっと口づけた。

「気になるなら、俺は向こうにいるから、
着替えて出ておいで。」

そう言って、部屋の灯りをつけて、キッチンへと移動した。

しばらくすると、服を着た奏が寝室から出てきた。

「簡単に夕飯作っとくから、シャワー浴びて
おいで。」

「うん。」

奏はシャワーを浴びて、長い髪を拭きながらリビングに戻ってきた。

「あ、ドライヤー出してなかったね。」

俺はドライヤーを持ってきて、ダイニングの椅子を部屋の真ん中に置いた。

「座って。」

奏がそこに座ると、俺はドライヤーで髪を乾かしてやる。


ふっ…
俺は今、お姫様の髪に触ってるんだな。

幼い頃の事を思い出して、笑みがこぼれる。


「ご飯食べよ。」

髪が乾いた後、ドライヤーを片付けながら言った。

「うん。」


俺が作ったポークソテーをおいしそうに食べる姿がかわいくて、我慢できなくなった俺は、食後、また奏をベッドルームへと拉致してしまった。