─── 1月3日 木曜日 ───

10時半。

ピンポーン ♪

玄関のチャイムを鳴らすと、おばさんが顔を出した。

「あら、ゆうくん、いらっしゃい。」

「明けましておめでとうございます。
本日は家族水入らずでお過ごしの所へお邪魔
して、申し訳ありません。」

俺は出来る限り丁寧に挨拶した。

「どうぞ、上がって。」

おばさんはいつも通りにこやかに迎えてくれた。

「お邪魔します。」

と玄関に来た奏を見た。


リビングに通された俺は、おじさんの体面(といめん)にあるソファの前に立った。

「皆さまのお口に合うかどうか分かりません
が、奏さんの好きな水無月堂の苺大福です。
よろしければ、お召し上がりください。」

と、菓子折りをローテーブルの上に置いた。

おじさんは一言も喋らない。
すると、おばさんが口を開いた。

「まあまあ、わざわざありがとう。
せっかくだから、みんなで今いただき
ましょうね。」

おばさんが菓子折りを持って、キッチンへ行くと、おじさんがようやく、

「まあ、掛けなさい。」

と声を掛けてくれたので、

「はい。失礼します。」

とソファに腰掛けた。


何とも言えない緊張した空気が張り詰める中、律(りつ)が2階から下りて来た。

「ゆうにぃ、久しぶり〜。」

にこにこ笑う律は、幼い頃のままだ。
緊張していた俺も、律の明るい笑顔を見て、落ち着く事が出来た。

「律、久しぶり。結婚するんだって?
おめでとう。」

「うん、ありがとう。
ゆうにぃは?
もしかして、ねぇちゃんと付き合ってんの?」

……律が地雷を踏んだ。

お茶と苺大福を持ってきたおばさんが、

「律! 何ですか! 藪から棒に!
とりあえず、お茶でも飲んで、ゆっくりして
いってね。」

と地雷を処理してくれようとした。