23時過ぎ

「お待たせ。」

と再びワンピースに着替えた奏が、戻ってきた。

「うん。
何飲む?」

と聞くと、

「ん〜、じゃあ、モスコミュール。」

と言うので、2人分オーダーする。

カクテルが届いて、乾杯する。


「奏。」

俺は、ジャケットの内ポケットから、プレゼントを取り出した。

「クリスマスプレゼント。
もらって。」

と言うと、焦った奏が頭を下げる。

「ごめん。
私、何がいいか分からなくて、プレゼント
用意してないの。
ほんとにごめん。」

「そんなの気にしてないから、いいよ。
それより、開けてみて。」

「うん。ありがと。」

奏はそっとシルバーのラッピングを開いた。

中からは、真っ白いベルベットの箱。

箱をそっと開けて、ト音記号のネックレスを見ると、

「かわいい〜♡
すっごく嬉しい!!」

と弾んだ声を上げる。

「でも、これ、もしかして、ダイヤじゃない?
こんな高価な物、もらえないよ。」

と冷静になって返そうとするので、焦った。

「返されても困るから、もらって。
俺がこんなのぶら下げてたら、変だろ?」

と言って、笑ったら、奏も笑った。

「じゃあ、お言葉に甘えて。
ほんとにありがとね。」

よかった。もらってくれた。

「ねえ、今、着けてみていい?」

とかわいい事を言う。

「あぁ。
着けてやるよ。」

俺は、ネックレスを取り、奏の後ろに立った。

「はい。」

ネックレスが胸元をキラキラと華やかにした。

「ゆうくんは、何が欲しい?
今度、一緒に買いに行こ。」

と言われたが、

「ん、欲しいものは買えないから。」

と答えた。

俺の欲しいものに気付いたのか、奏は一人で真っ赤になって俯いてしまった。

やっぱり奏は、かわいい。