─── 12月5日 水曜日 ───

俺はエレベーター前で、奏を待ち伏せた。

何機かのエレベーターが目の前に到着したが、あえて見送り、奏を待った。


12時43分

奏たちがやってきた。

「今からお昼?」

と声を掛けると、

「そう。」

と笑顔で答える。


んー! 奏、かわいい〜!


「橘さん、紹介してよ。」

奏のパート仲間らしき女性が、こちらをチラチラ見ながら言う。

「田崎 優音くん。
同級生というか、幼馴染みです。」

「はじめまして。田崎優音です。」

俺は、出来るだけにこやかに挨拶した。

「俺も今からお昼なんだけど、一緒に
食べない?」

俺はドキドキしながら、本題を切り出す。

奏は無言で固まっている。

唐突過ぎたかな?

「あら、行って来なさいよ。
どうせ、テーブルは4人掛けだから1人
あふれるんだし、私たちの事は気にしなくて
いいわよ。」

「そうよ、そうよ。行ってらっしゃい。」

パートさん達、ナイスアシスト!

「じゃあ、そうさせていただきます。」

やったぁ!


「ゆうくんも別館にいるの?」

奏にゆうくんと呼ばれるだけで、嬉しくて心がそわそわする。

「違うよ。俺は、ここ。」

後ろのドアを指差して教えた。

「へぇ、そうなんだ。
私たち、毎日ここ通るから、また会うかも
しれないね。」

うんうん。
きっと、会うよ。

だって、俺は課長になったから、業務に支障がない限り、好きな時刻に昼休みを取れるんだ。

これからは、極力、奏の昼休みに合わせるよ。