そう俺たちを紹介し合った母たちは、またおしゃべりを始めた。

俺は、おばさんの後ろに隠れる奏(かなで)のところに行き、声を掛けた。

「かなでちゃん、一緒に遊ぼ。」

すると、奏は、コクンと頷いて、花が咲いたように にこりと笑った。

「探検しよ?」

俺は、勇気を出して、奏の手を取った。
奏の手は、とても華奢で、俺が守ってやらなきゃって気にさせられた。

俺たちは、手を繋いで、音楽教室の中を探検した。

空き教室を見つけては、覗いてみたり、レッスン中の教室をドアのガラス越しに眺めてみたりした。

たったそれだけの事なのに、奏と手を繋いでいるだけで、ドキドキ、わくわくした。

奏は、何も言わなかったが、時々、クスクス笑う姿は、とてつもなくかわいかった。

しばらくすると、ロビーから、母の声が聞こえた。
「優音、帰るわよ〜。」

「行こ?」
俺は、奏の手を引いて、ロビーに戻った。