ーキーンコーンカーンコーンー


授業のチャイムがなる。…「行かないと」そう思ったのは一瞬で、「やっぱいいか」と諦めた。…なんだかこの空を見ていたら、授業を1時間サボることなんて大した事じゃないような気がしたから。



「涼し〜な〜」


そんな私に彼は何も言わなかった。いつものようにデジカメで写真を撮っていた。


「…ねぇ」


「ん?」


「夕凪君は、なんで空を撮るの?」


空…。自分の名前を言ってるようで少し声が裏がえったけど、どうしても聞いてみたかった。


「単純な理由や」


「単純?」


「そ。…世界で1番好きなのが、空やから」


ドキッとした。私のことを言われてるんじゃないってわかっているのに、自分に言われているようで。……なにより、そう言った彼の顔があまりにも輝いてて。


「…俺な、写真家になりたいんや」


「写真家…?」


すると、彼は持っていたカバンをガサガサとあさりはじめた。


「これ」


「えっカメラ…?!」


デジカメとは違う。本格的なカメラ。


「これで世界を旅して、綺麗な瞬間を撮りたいんや」


「…旅…か…」


「…撮ってみる?」


「ううん」と、答えようとしてやめた。彼がどうしてそこまで写真にこだわるのか…彼の目にはどんな風に世界が映っているか、知りたくなったから。


「ここを押すんやで」


「うん」


「んじゃ、いいと思うところ…撮ってみ!」


私はカメラをもってから、何故か胸がドキドキしていた。








ーカシャー







その音はまるで、世界を変える音だった。私の世界が色づく合図だった。

思えば、この頃からもう既に変わり始めていたのかもしれない。