そういうと、彼は私を責めたりしなかった。


「雨野さんは、いろいろ難しく考えすぎや」


むしろ、そう言われて逆に頭にきた。



「私は夕凪君みたいに自分勝手じゃないから!!」



やってしまった、と思ったのは屋上を飛び出してからだった。

完全に逆ギレ以外のなにものでもない。

ただ、彼の世界が私とは違っていて…きっと私は羨ましかった。…自分には見えていない綺麗な世界が見えていて憧れた。だけど、彼みたいに私の世界は綺麗に輝いたりしない。

だから余計悔しかった。

何も知らないくせに。私がどれだけ苦労してるかわからないくせに。どれだけ私が1日を耐えるのが辛いか知らないくせに。


『雨野さんは、いろいろ難しく考えすぎや』


ただずっと、彼の言葉が頭でリピートされていた。