「おっ、夕凪〜!…ちゃんと来たな!って…雨野がついてたなら大丈夫だったか」



心の中で「当然でしょう?」と、いつもなら思う。だけど彼だけは違う。…屋上で景色を見ているのが心地いいと感じた私は、彼もそう思っていると知っている。

だからその時間を壊すことに抵抗があるのだ。



「先生、なんでも雨野さんに任せんどいてや〜」


うっかり聞き逃しそうなくらい軽く言った言葉。私は、座った彼を凝視した。

今…なんて?…


「ああ、すまんな雨野。…よく動いてくれる優等生だからつい…な」


「あ、いえ。……優等生だなんて…けど、私は学級委員長なんで、当然ですよ」


「悪いな」


私は先生に会釈してから席に座った。ホームルームの始まるチャイムがなり、みんなも席についた。




「じゃあくじ引いていけー!」


古田先生の席替えは基本くじ引きだ。

えっと…6?…6は…。……うそ、先生の真ん前だ。…いやじゃない。…そんなわけない。むしろ、授業に集中出来るし先生からの評価もあがるはず。…なのに、なんでだろう。…前みたいに気持ちが湧いてこない。


「空〜!!席どこだった?」


「瑠璃…6だよ」


「え、これ9じゃない?」


「うそ?!」


確によく見れば6の上に線が引いてある。


「あはは〜空ってば〜!」


9…9…。…あ、窓側の1番…後ろだ…。


「嬉しそうだね、空」


「え?そんなことないよ」


そうだ。先生の前のほうがよかった!!


「そう?」


そう。決して、嬉しいなんて思っているわけがない。