「あ、そろそろチャイムなるで」


いつも私は彼の隣で空を見たり、街を眺めたりと…周りから見たら無駄な時間を過ごしていただろう。

けれど私には無駄なことなんかじゃなくて、居心地がいいのもあるけど…なにより誰も私を見ていなくて、自分が自分でいられて楽だから。

そして彼はずっと写真を撮っていて、その音を聞くのが好きだった。カシャ…っと響く音が自分の心を浄化していくようで。





「夕凪君は教室行く?」


教室に戻る前に、よくサボる彼に私はそう聞いた。


「古田先生に席替えするから、来いって言われてんねん。…はぁ〜」


最後のため息から、彼はまだ写真を撮っていたいということが充分に伝わってきた。


「後ろの席がええなぁ〜」


「どうして?」


「外を見とってもバレへんやろ?」


そんな自由な彼が羨ましかった。…私にはそんなこと出来ない。たったそれだけの事が出来ない。…優等生だから。それを演じてきたから。


「…なぁ」


「ん?」


「……な……なんでもないわ〜!!」


何かを言いかけた、その続きが気になったけれど…彼はもう屋上のドアを開けて中へ入りかけていたので、私も急いでついて行った。