「ふぅ」



教室が紅く染まった頃、私はまだプリントの整理をしていた。

っていうか、これは1人でできる量じゃないじゃん!!

と思いつつ、きちんとホッチキスで止める。




ーガラガラー


やっと半分くらい終わった時、教室の後ろのドアが開いた。


「…あ、夕凪君」


入ってきたのは、カメラの入っているカバンを持った夕凪君だった。


「…写真、撮ってたの?」


なにか喋らないとと思った私はとっさにそんなことを言っていた。


「おう、綺麗な夕焼けをとろう思ってな」


彼はそう言いながら私の前のイスを反対に向き変えて座る。


「これ、とめればええんやろ?」


「え、うん。……って、大丈夫だよ!!」


夕凪君は私から半分プリントをとって、ホッチキスでとめていた。


「1人じゃこの量無理やから、手伝うわ」


「…でも……」


「それに、真っ赤に染まる教室を撮るのも、なかなかええ感じになると思うねん」


「……ありがとう」


確かに、夕焼けの色が教室に差し込んで真っ赤に染まってる。私がそれを綺麗だと思ったのは、彼にそう言われてからだった。

彼がいると、いつもの風景が全て違うものになる。


「見てみ」


窓の外を見ると、住宅の隙間から見える夕焼けが姿を消そうとしていた。

それはまるで…



「今日もお疲れ…って言うとるみたい…」



彼が私と同じことを思っていたことにびっくりした。

それと同時に、少しだけ嬉しかった。彼の見る世界はいつも輝いているから、私はそれに1歩近づけた気がしたから。