「現像したら持ってくるな」


「うん」


カメラの音が耳の奥でなり続ける。


「ええやろ?写真」


そんな私をわかっていたのか、彼は軽くドヤ顔で言った。私が「うん」と素直に答えると、彼は笑った。


「ほな、行こか〜」


「えっ?どこに?!」


「へ…授業終わりのチャイムなったで?…」


え…。うそ…。そんなのなった?……いや…言い表せないけど…今私は夕凪君の世界にいて、きっと深く沈んでいたんだ。…彼の世界に引き込まれて、周りのものが見えなくなっていた。


「行こう」


座り込んでいる私に夕凪君は手を差し出した。…太陽の光で顔は見えなかったけど、その光で輝いている彼の姿を…私は一生忘れない。





「空〜〜!」


「瑠璃っ…ごめんね」


瑠璃の顔を見て一瞬で現実に引き戻された私は、いつも通りに顔を作る。


「ううん。ところで2人でなにしてたのぉ?」


「大したことじゃないよ」


「怪し〜!!」


「ほんと何もないよ〜!」


それからの瑠璃はしつこかった。…けれど、教室に先生が入ってきたことに気づいたら、諦めて席に座った。


「えーっと、今日プリントをまとめてほしいんだが、誰か残ってやってくれる人いないか?」


先生がそういうと、みんなは決まって「えー」と言う。困った顔でチラッと私を見たので仕方なく手を挙げた。


「おっ、雨野!やってくれるか?!」


「はい」


「空いつもやってない〜?いいの〜?」


クラスのみんなからそう聞かれ私は「学級委員長だもの」と笑って答えた。