そう言って新井くんが笑って

私の隣に座ると

自分の上着を私の肩に掛けた。

「…ちょっと濡れてるけど…

無いよりいいよ。」

「…でも……」

「俺は寒くないから大丈夫…。」

「…あ…うん、ありがとう…」

「………」

新井くんの手が静かに私の髪の毛を触る。

「……え」

近くで見ると……

Tシャツ越しでも新井くんの筋肉質な

体がわかる…。

新井くんって細いと思ってた…。

私の髪の毛に伸ばした新井くんの腕が

ちょうど私の目の前にある。

筋肉質な腕から血管が浮き出ているのが

見える。

「……新井くん…筋肉すごいね…。」

関係ない話をしてこの変な空気を

どうにかしたい…。

「…私なんか、筋肉なんて

最近めっきり落ちちゃってね…。」

「……紗和…」

「…え…な…」

私が"何?"と答える前に…

新井くんは素早く私を抱きしめていた。

ギュッ……

「…紗和…」

耳元で新井くんが掠れた低い声で

優しく私の名前を呼ぶ。

「紗和って、すごく良い匂いする…

今日、隣にいてずっとこうしたいって

思ってた…この匂いがずっとほしかった。」

ギュッ…ッ…

彼は、抱きしめながら私の髪の毛を

かき上げると首に自分の顔をつけた。

彼の鼻が私の首筋にくっついている。

「…紗和の首のホクロ…

ずっと…触れたかった…」

チュッ…

そう囁いた彼は、首筋に唇で触れた。

えっっ!ちょっ…何?

そんな事…どこで習ったのっっ!

「……あ…新井くん…ダメ…やめ…」

私は、新井くんから逃げるように

体を捻る。

それでも新井くんは私を離さなかった。

「…ダメ……新井くん…やめて、離して…。」

私の語気が強くなる。

「ヤダ…やめたら…逃げるだろ…?

離したら……もう…抱きしめれない…。」