「…これとかは?
ちょっとシンプルすぎる?
やっぱ黒縁とかがいいのかな?」
私が眼鏡を選んでいる少し後ろに
新井くんが、所在なさげに立っている。
そんな新井くんに私は、彼の眼鏡を選んで
時々、後ろを振り返っては新井くんに
見せたりしていた。
「…ちょっと新井くんっ、かけてみてよ。」
私が新井くんに眼鏡を渡して
鏡の前で眼鏡をかけるように促す。
その眼鏡は、黒縁でスクエアーの
シンプルな眼鏡だった。
「…あっ、似合うよ…。」
私は、鏡越しに新井くんを見た。
新井くんは、あまり気乗りしない
感じで眼鏡を外した。
「…じゃあ、これは?」
今度は、細い縁の本当にシンプルな
眼鏡を渡す。
彼が眼鏡をかけると、また鏡を覗いた。
「こっちも似合うね…。」
整った綺麗な顔立ちの彼にはどの眼鏡も
よく似合っていた。
「…どれがいいかな?」
「……」
「新井くん…?」
「俺、やっぱ…貰えない。」
そう言って新井くんは
店を出ようとした。
「…新井くんっっ…」
その腕を私は、とっさに掴んでいた。
「…え…?」
「…お願い…私に選ばせてくれない?」
こんな風に会うのは
きっとこれが最後だから…。
「…ね、私だって…1つくらい
新井くんにお願いしてもいいよね?」
「…お願い?…」
「うん…いいよね…?
これは私のお願いだから。」
「わかった…」
「…よかったぁ…じゃあ、選ぼうよ。」
そう言って私と新井くんは
眼鏡を選んだ。
「こちらでよろしいですか?」
「…はい、お願いします。」
「では、視力を検査しますのでこちらに
お願いします。」
新井くんが奥の部屋に行っている間
眼鏡を試着して時間を潰していた。
新井くん…これで、眉間にシワ寄せて
見なくてもいいんだ。
よかったぁ…。
何だか…嬉しかった。
気持ちが、明るい気分になった。
トントン…
不意に私の肩を叩かれ、振り返ると
凄い派手なサングラスをした
新井くんが立っていた。
「…どう?!」
「…え…どうって…何か昆虫みたい。」
「…びでぇ…っ、けっこうイケてるって
思ったのに…っ。」
そう言って新井くんは
そのサングラスを外して私に
かけようとした。
「ちょっ…こんなのヤダァ…。」
私がそのサングラスを強引にかけられ
仕方なく新井くんの方を見ると
「アハハ…ヤバッ……昆虫じゃん。」
そう言って新井くんは、手を叩いて
笑っている。
「…ちょっと…失礼すぎなんだけど…っ」
そんな新井くんにつられて私まで
笑ってしまう。
「そう言えば紗和って、目が悪いの?」
不意に彼が聞いてくる。
「あ…うん、いつもコンタクトだけど
家では、けっこう眼鏡してるかな…
え…何で?」
何で、急にそんな事…
「さっき、眼鏡を選んでたみたいだから…」
さっきって…ちょっとしか見てないけど
もしかして見てたのかな…
「うん…ちょっとね…」
「紗和って、眼鏡したら賢そうだよね…」
少し笑いを堪えたように彼は言う。
「は…?それって、どういう意味よっ…」
私が、少し不機嫌な顔で彼を見ると
「あっ、これとか似合いそうじゃん。」
「もう、話を逸らしたでしょっ。」
そう言って彼の腕を軽く揺らしながら
見上げると今度は優しい顔で私を見ていた。
「お待たせ致しました…では、商品は
明日には出来上がりますので…。」
店員さんが私達の方に近づいてきた。
「あ、はい…」
「支払いはどうされますか?」
「あの、今…済ませます。
引き換え伝票は、彼に。」
そう言って彼の方を示すと
その若い店員の女の人が
「先程から本当に仲いいですね……
…弟さん、イケメンで素敵ですね。」
「…え、あ…」
弟……。
"はい…"
そう答えようとした時…
「彼女は…俺の好きな人なんで…。」
私の後ろから掠れた低い声がいつもより
ハッキリと大きな声で聞こえた。
「あ、そうなんですね…
申し訳ありませんっ。失礼しました。」
店員さんはあわてて私に頭を下げた。
「…いえ、大丈夫ですから…。」
そう言うと、会計を済ませて店を出た。
ちょっと…複雑な気分…
でも、新井くんが…
"俺の好きな人なんで…"
こんな風にはっきり言われると…
どうしたらいいのかわからなくなる。
「新井くん…何であんな事言ったの?」
「あんな事って…何?」
「店員さんに変な事、言って…。」
「変な事じゃない。」
「え……?」
「俺…弟じゃないじゃん。」
「そりゃ、そうだけど……。」
でも……弟みたいに年…離れてるから。
「…俺は…本当の事を言っただけ。」
「…………」
本当の事…
それは、私とあなたは
先生と生徒だっていう事だ…。
ちょっとシンプルすぎる?
やっぱ黒縁とかがいいのかな?」
私が眼鏡を選んでいる少し後ろに
新井くんが、所在なさげに立っている。
そんな新井くんに私は、彼の眼鏡を選んで
時々、後ろを振り返っては新井くんに
見せたりしていた。
「…ちょっと新井くんっ、かけてみてよ。」
私が新井くんに眼鏡を渡して
鏡の前で眼鏡をかけるように促す。
その眼鏡は、黒縁でスクエアーの
シンプルな眼鏡だった。
「…あっ、似合うよ…。」
私は、鏡越しに新井くんを見た。
新井くんは、あまり気乗りしない
感じで眼鏡を外した。
「…じゃあ、これは?」
今度は、細い縁の本当にシンプルな
眼鏡を渡す。
彼が眼鏡をかけると、また鏡を覗いた。
「こっちも似合うね…。」
整った綺麗な顔立ちの彼にはどの眼鏡も
よく似合っていた。
「…どれがいいかな?」
「……」
「新井くん…?」
「俺、やっぱ…貰えない。」
そう言って新井くんは
店を出ようとした。
「…新井くんっっ…」
その腕を私は、とっさに掴んでいた。
「…え…?」
「…お願い…私に選ばせてくれない?」
こんな風に会うのは
きっとこれが最後だから…。
「…ね、私だって…1つくらい
新井くんにお願いしてもいいよね?」
「…お願い?…」
「うん…いいよね…?
これは私のお願いだから。」
「わかった…」
「…よかったぁ…じゃあ、選ぼうよ。」
そう言って私と新井くんは
眼鏡を選んだ。
「こちらでよろしいですか?」
「…はい、お願いします。」
「では、視力を検査しますのでこちらに
お願いします。」
新井くんが奥の部屋に行っている間
眼鏡を試着して時間を潰していた。
新井くん…これで、眉間にシワ寄せて
見なくてもいいんだ。
よかったぁ…。
何だか…嬉しかった。
気持ちが、明るい気分になった。
トントン…
不意に私の肩を叩かれ、振り返ると
凄い派手なサングラスをした
新井くんが立っていた。
「…どう?!」
「…え…どうって…何か昆虫みたい。」
「…びでぇ…っ、けっこうイケてるって
思ったのに…っ。」
そう言って新井くんは
そのサングラスを外して私に
かけようとした。
「ちょっ…こんなのヤダァ…。」
私がそのサングラスを強引にかけられ
仕方なく新井くんの方を見ると
「アハハ…ヤバッ……昆虫じゃん。」
そう言って新井くんは、手を叩いて
笑っている。
「…ちょっと…失礼すぎなんだけど…っ」
そんな新井くんにつられて私まで
笑ってしまう。
「そう言えば紗和って、目が悪いの?」
不意に彼が聞いてくる。
「あ…うん、いつもコンタクトだけど
家では、けっこう眼鏡してるかな…
え…何で?」
何で、急にそんな事…
「さっき、眼鏡を選んでたみたいだから…」
さっきって…ちょっとしか見てないけど
もしかして見てたのかな…
「うん…ちょっとね…」
「紗和って、眼鏡したら賢そうだよね…」
少し笑いを堪えたように彼は言う。
「は…?それって、どういう意味よっ…」
私が、少し不機嫌な顔で彼を見ると
「あっ、これとか似合いそうじゃん。」
「もう、話を逸らしたでしょっ。」
そう言って彼の腕を軽く揺らしながら
見上げると今度は優しい顔で私を見ていた。
「お待たせ致しました…では、商品は
明日には出来上がりますので…。」
店員さんが私達の方に近づいてきた。
「あ、はい…」
「支払いはどうされますか?」
「あの、今…済ませます。
引き換え伝票は、彼に。」
そう言って彼の方を示すと
その若い店員の女の人が
「先程から本当に仲いいですね……
…弟さん、イケメンで素敵ですね。」
「…え、あ…」
弟……。
"はい…"
そう答えようとした時…
「彼女は…俺の好きな人なんで…。」
私の後ろから掠れた低い声がいつもより
ハッキリと大きな声で聞こえた。
「あ、そうなんですね…
申し訳ありませんっ。失礼しました。」
店員さんはあわてて私に頭を下げた。
「…いえ、大丈夫ですから…。」
そう言うと、会計を済ませて店を出た。
ちょっと…複雑な気分…
でも、新井くんが…
"俺の好きな人なんで…"
こんな風にはっきり言われると…
どうしたらいいのかわからなくなる。
「新井くん…何であんな事言ったの?」
「あんな事って…何?」
「店員さんに変な事、言って…。」
「変な事じゃない。」
「え……?」
「俺…弟じゃないじゃん。」
「そりゃ、そうだけど……。」
でも……弟みたいに年…離れてるから。
「…俺は…本当の事を言っただけ。」
「…………」
本当の事…
それは、私とあなたは
先生と生徒だっていう事だ…。



