「え…いいの?さっき、ダメだって…」

「あ、うん…大丈夫…

折角、来てくれたんだもん。」

そうだよ、猫を見せて…

少し、落ち着かせないと……。

新井くん…ケンカの時と同じで

興奮すると周りが見えなくなるんだ。

だから…刺激しちゃダメだ。

ガチャ…

「…さぁ、どうぞ…。」

「…おじゃまします。」

新井くんをリビングに通すと

私は、いそいでキッチンでお茶を入れた。

「ニャァ…ニャ~」

新井くんの側に猫が駆け寄っていく。

「…元気だったかぁ~。」

彼は、猫を膝の上に寝かせて撫でている。

「新井くん…猫、好きなんだね。」

「…まぁ、好き…。」

「…そっか…。」

「あ、スプレー綺麗になってる……。」

新井くんは、ボソッと呟いた。

「あぁ…スプレーね、何度か洗って

綺麗になったんだよ。」

私が紅茶をテーブルの上に置きながら

話を続けた。

「…お前、大事にされてるなっ。」

新井くんが、嬉しそうに笑っている。

ケンカをしている時の鋭い表情が

まるで嘘みたいに思えた。

だって、今の彼は本当に可愛い表情に

なっていたから…。

ずっと、そんな顔してたら…

怖くないのに…。

今なら…

聞けるかもしれない。

「ねぇ、新井くん…聞いていい?」

「え、何…?」

「…何でケンカしたの?

公園の時も、学校の時も…。」

「…………」

「新井くん?」

「…この猫、苛められてたから…。

スプレーかけられて…

こいつを…

高い所から落として笑ってた…。」

「…えっっ…そうだったの…。」

あの時のケンカの原因って

猫だったって事…?

助けようとしてたんだ……。