いやいや落ち着いて……嘘だよね。

からかってるよね?

顔まで真っ赤にして…

私まで赤くなりそうだったじゃない…。

好きって、もちろん先生としてだよね。

そうだよ、ここは、冷静に…。

そう…教師らしく、冷静に…っ!

「新井くん……さっきから

自分が何を言ってるのかわかってる?

先生をからかったらダメだよ。

もちろん…冗談だよね?

好きって、先生としてだよね?」

「…いや…好きって…そのままの意味だし…

何を言ってるかちゃんとわかってる。」

嘘っっ!本気で…?

本気で好きって…こと?

え、え…どうして?!

落ち着いて!冷静に…

「わかってないよ……

私は、あなたの担任の先生なんだよ?

…新井くんの気持ちは嬉しいよ。

でも…私は、あなたの担任だから…

新井くんの気持ちにはこたえられない。

それと…

新井くんの気持ちを知ったからには

もう猫を家に見に来てもらうわけには

いかないかも…。

今、お財布ないからさ…

お金…後でちゃんと渡すから…

じゃあ、もう先生…行くね。」

「…あ、ちょっ…待って…俺は本当に…」

「じゃあ、また明日!」

新井くんの声を遮るように一方的に

話を終わらせると

新井くんに背を向けて歩き出した。

何にも感じてない顔をしていたけど

本当は膝も手もガクガク震えていた…。

自分ではもっともらしいこと言ってるけど

声がどこか遠くから聞こえていた。

私なのに…私じゃないみたいな感覚。

新井くんがどんな顔しているのか

恐くて…

新井くんの顔を1度も見れなかった。

嘘だよね…新井くん……

本当に?本気なの?

仮に本気だとしても、その気持ちには

応える事はできないけど…

けど…けど…

私の足が急に止まった…。

進めない…何でだろう…